2011年06月12日

サマータイムブルースがきこえる 

 


 灯台のある高台から海岸線の県道へ、階段が通じている。自転車を担いで下りる途中、若いカップルとすれ違った。「こんにちは」。目を伏せて、心の中でつぶやく。こういう場面で、自分からさりげなくあいさつなどできてこそサイクリストだと思うのだが、いざとなるとなかなかうまくいかない。人間として最低限の愛想も見せることができない自分は、まだまだ未熟者、というか偽物に過ぎないのかもしれない。
 さすがに汗でべとつくので、ウインドブレーカーを脱ぐことにする。風を肌に感じると、気分が改まった気がした。いよいよ後半戦、心の空気を入れ換えて御前崎を後にする。
 岬の縁を行く県道357号は通る車も少なく、自転車で走るには快適な道だ。風向きも悪くはない。若干追い風かもしれない。沿道にぽつぽつあるドライブイン風の店が軒並み休業状態なのが、気になるといえば気になる。しばらくすると道は大きく右に曲がり、防風林の中を上り始めた。
 峠を下る途中で、行く手に巨大な風車が姿を現した。真っ白な羽が3枚、風力発電用の風車である。そのさらに向こうには、白い塔のようなものが林立している。
 ついに来たか、と思った。中部電力浜岡原子力発電所。国道150号との合流近くまで走ると、小高い丘の上に、箱のような四角い建造物が並んでいるのが見えた。
 原発の入り口は、国道に合流して1キロほどの所にあった。「浜岡原子力館」という看板が出ていて入場無料とあったので、寄ってみることにする。時刻は14時30分。まだ時間はある。

 半分ほど埋まった駐車場にはバスなども停まっており、団体客らしい年配の男女が楽しげに歩いていたりする。駐車場脇のカラフルで小ぢんまりとした建物は別館で、本館は階段の上に広がる敷地の奥に建っていた。モニュメント風の塔を備えた立派な建物だ。屋根つきの広々とした前庭にはベンチが並び、土産物やソフトクリームの売店や喫茶店もある。なんとも、ぜいたくな空間の使い方である。
 土産物屋の陰に自転車を立てかけてから、本館に入る。円形の建物の真ん中に明るく広々としたロビーがあり、カウンターに制服のコンパニオンが座っていた。ほんとに金を払わなくていいのか、と多少の不安を覚えながら、順路に従って奥へ進む。
 展示は、「資源の枯渇」「発電の歴史」というように、テーマ別にまとめられていた。イラストや図を多用した説明は親切でわかりやすい。視覚だけでなく、聴覚にも訴えてくる。子ども向けなのか、「わかるかな?」という感じで、アニメの主人公のような声が呼び掛ける体験型の展示もある。丁寧に回ればそれなりに勉強になりそうだったが、説得されてしまうのもいやなので、ざっと見るだけにする。この説明ってあくまでPRなんだよね。でもそれなら、たとえば上野の科学博物館の展示はどうなのか。PRと客観的な見解は、どこがどう違うのだろう。
 子どもを連れた家族、おじさんおばさん、若いカップル。いろんな見学者がいる中で最も印象的だったのは、黒いスーツの集団だ。名札を着け、カメラを手に何やら低い声で話しながら、三々五々固まって展示を見ている。視察とか取材とか、そういうパブリックな人たちなのかもしれない。
 展示スペースの中心あたりに、原寸大という原子炉の模型がそびえており、ラスベガスの看板のようなネオンがぴかぴか光って発電の過程を説明していた。見上げる高さに、ニュースに聞く「1号機」「2号機」といった言葉を重ね合わせてしまう。何と空虚な言葉だろう。俺は何もわかっていないのだ、とあらためて思った。でもこれはこれでなかなかのスペクタクル。思わず立ち止まって見入ってしまう。「電気使いすぎじゃないの」と突っ込みを入れるのも忘れて。




 3時も近くなり、さすがにもう行かなければと思う。ロビーを抜けて、玄関を出ようとする時に、あのアニメ風の説明がまた流れてきた。呼び掛ける声は相変わらず明るく元気で、それだけにいっそう虚しく聞こえた。
 「原子力って、地球環境にとってもやさしいエネルギーなんだよ」

 寄り道が過ぎたかもしれない。でも無駄な時間ではなかったと思いながら、再び国道に出る。さっきより日差しの色が濃くなった気がする。おやつの時間。そういえば昼飯を食べていない、と思い出し、辺りを見回すが、状況は改善していなかった。さすがにここまで来ればコンビニやファストフードはあるけれども、そこで妥協するほど切迫してはいないので、先を急ぐことにする。
 10分ほど走ったところで、何やら大きな看板が見えてきた。「浜岡砂丘 左折」。これだけでかでかと、しかも筆文字で書かれたら、素通りするのもなんだな、と思ってしまう。行くつもりでした、という態で左折する。
 駐車場からは、なるほど砂山に阻まれて海が見えない。自転車を持って上る必要は特になかったが、何というか、相棒のウルトラマン号にも太平洋を見せてやりたいというか、そんな友情にも似た強い思いに突き動かされ、難儀したけども10分ほどかけて、何とか蟻地獄のような砂山を上り切ると、一気に眺望がひらけた。見渡す限りの白い渚と、青い空。幾筋かの飛行機雲が、水平線の彼方に延びている。
 映画「砂の女」はこの砂丘で撮影されたという。もう十数年も前のことで、ほとんど記憶の底に沈んでしまったが、この作品は確かに見たことがある。岸田今日子は若くても岸田今日子なんだな、という感慨には軽い失望が含まれていたような気がするが、その当時自分がこの映画に何を期待していたのかは、いまいちはっきりと思い出すことができない。
 左手に原発の建物が見える。写真でも撮るかと、自転車を引きずりながら、構図を探す。広角ではあまりに建物が小さく何だかわからないので、少しでも近づこうと思うが、歩いても歩いても原発は遠いままだった。
 疲れ果てて、適当な所であきらめる。かなり近くまで行けそうだが、太ももと上腕がもう限界だった。これからまだまだ走らなければいけないのだ。数枚撮ってから、この景色を心にも焼きつけておこうと、砂浜の真ん中に無造作に置かれたテトラポットに座って海を眺める。静波海岸ほどの賑わいではないが、この浜でもサーフィンを楽しむ人はいて、やはり黙々と静かに海に向き合っていた。



 ふと、人の気配がした。振り向くと、砂丘を越える道を下りてくる人の姿があった。ダンガリーシャツにジーンズ。男性である。時折立ち止まって、首に下げた望遠レンズを原発の方に向けてはまた歩き出し、だんだんこちらに向かってくる。
 じろじろ見るのも悪いと思い、向き直って煙草に火をつける。そのうちに、その人がすぐ背後までやって来たのがわかった。話しかけてくるのだろうか、と身構えたが、声はしなかった。代わりに3枚、4枚と連写するシャッター音がする。ちらりと見たところでは、どうも砂から何本か突き出たコンクリートの一つを踏み台にして、原発を撮っているようだ。なるほどこのテトラポットは、いい撮影ポイントかもしれない。
 十数枚撮ってから、今度は海の方に回って、その人はなおも撮影を続けた。海辺のサーファーを入れたカットを狙っているらしい。カメラは長短のレンズをつけた2台。構図を変え、カメラを変え、その執拗さからして、記念写真ではなさそうだ。プロかもしれない、と直感的に思う。気になるので、ひと回りしてまたテトラポットで撮り始めたその人に、声を掛けてみた。
 「取材ですか」
 「ええ、まあ」
 「もしかして、新聞とか」
 「いえ、私は雑誌の方です」
 七三に分けた白い髪をなびかせながら、その人は最低限のことだけを答えた。50代後半くらいだろうか。やはりカメラマンで、雑誌の表紙やグラビアを主に撮っているという。知的な面差しを崩すことなく、淡々とした話しぶりには隙がない。二の句を継ぐのに戸惑う。
 海に向かって左側に原発、右側に風車。その対照的な風景が面白くて、ここで撮っているのだという。確かに御前崎と反対側の掛川市方面の海沿いには、風力発電の巨大な風車が一定の間隔を置いてずらりと立ち並び、その列は果てしなく、ほとんど地平線の向こうまで続いているように見える。
 わからないのは、その風車のほとんどが停止していることだった。「こんなに風吹いてるのにね」と言ってカメラマン氏は、青い空ににょきにょき伸びる白い風車の列を見やった。その口調には、何故なのか理由が知りたいというよりも、そういう情景そのものに興味を覚えるのだというニュアンスが含まれているように感じられた。
「中電って、風力発電やってるんですね」
「やってますよ」
「知りませんでした」
「・・・」
予習して来なかったのが悔やまれた。風に流れて声がよく聞き取れないこともあり、会話は途切れがちになる。カメラマン氏は立ち上がり、また海の方に回って撮影を始めた。
 これ以上、仕事の邪魔をすべきではないのかもしれない。すでに15時40分、日も傾き始めている。あいさつするのも何だか変なので、黙って行くことにした。

 砂丘を後に、再び国道150号。10分ほど走って、掛川市に入る。沿道に続くのは、メロンやスイカ、イチゴといった果物の農園だ。千葉の外房あたりの風景に似ている。この辺も夏になれば海水浴客で賑わうのかもしれない、などと思いながらまっすぐな道をしばらく行くと、今度は「浜松御前崎自転車道」という看板が現れた。忘れたころに現れる自転車道。未だ偽物とはいえ、サイクリストとしては無視するわけにもいかない。また左折して海の方に向かうことにした。
 左に砂浜、右に防風林。砂丘の上に延びる自転車道には河口を渡る専用の橋も整備されていた。車やバイクは進入禁止。時折、散歩する人がいる。ネコが歩いている。どんぶりを伏せたような、大きなカメが道の真ん中で甲羅干ししている。静かで、のんびりした空気が漂っていた。
 所々砂がたまっている箇所があり、自転車を降りなければならなかった。放置というわけではないだろうが、メンテナンスは十分とはいえない。自動車が走る道なら、こういうことはないはずだ。こんなところにもクルマ中心社会のエートスが見て取れる。自転車を降りなければ進めない自転車道。利用者のことを考えているとはとても思えない。国交省だか静岡県だか知らないが、行政の見識を疑う。
 振り返ると、原発の建物が見えた。だいぶ走って来たはずだが、あまり離れていないように見える。風車の列は、まだ続いていた。この辺りまで来ると、回っているのもいくつかある。風の強さにそれほど差はないはずなのに、止めたり回したり。まったくわけがわからない。



 太田川まで15キロほど続くはずの自転車道はなぜか途中で未舗装となり、結局3分の2も行かないうちに、また国道に戻ることになった。川の向こうにも自転車道はまだまだ続いているらしいが、もう面倒くさいので、これ以上辿るのはやめることにする。
 自転車専用道もいいけれど、まずは一般道に自転車レーンを造ってほしい。歩道しか走れないような道を造っておいて、道交法的に歩道走行は禁止だなどと今さら取り締まりを厳しくするなどというのは明らかに間違っている。「歩道通行可」という逃げ道を作ってクルマ一辺倒の道路しか作ってこなかった行政の責任がなぜ問われないのか。
 憤慨しながら走る国道150号。磐田の市街地に入って道は狭くなり、車は多くなった。時刻は17時30分。夕方のラッシュが始まっている。ここらがもう潮時かもしれない。ふとそう思った。このまま行っても道は混雑する一方だろう。地図を見ると、磐田の駅が近い。次の交差点を右折して県道に入れば、駅までは5キロほどの道のりだ。混雑した狭い国道をこの先10キロ以上も我慢して浜松駅まで行く理由は見当たらなかった。
 旅のゴールは磐田駅。そういうことにしよう。
 磐田駅に向かう県道の手前でたまたま見つけた「お食事処 寿し幸」は、寿司というよりは定食がメインの食堂のようだった。汗にまみれた偽サイクリストを、はきはきしたおばさんが迎えてくれた。小鉢も充実、豪華版のとんかつ定食997円。食欲を満たす喜びに酔いしれながら、むさぼるように肉を食う。思えば今日は早朝におにぎりを食べただけ。初めての食事らしい食事だった。
 
 道の悪さにささくれ立った心も、腹が満たされるとさすがに少し穏やかになった。駅へ向かう県道で、学校帰りの中高生たちの自転車とすれ違う。「今日一日、おつかれさん」と、心の中でつぶやいてみる。一帯は市街地ではあるが、まだ緑があちこちに残っていて、水をたたえた水田が、落日を映して赤く染まっていた。カエルが盛んに鳴いている。明日はやはり雨なのだろうか。
 「晴れた日にしかできないことは、明日のうちに」
しばし道端に自転車を停めて、昨夜のお天気お姉さんの言葉を思い出す。こうしてこの言葉をかみしめてみると、何だか人生訓のようにも思える。ともかくやってのけたぞ、お姉さん。
 18時50分、磐田駅到着。サイクリストの矜持は、このようにして何とか守られたのである。





 2011年5月25日
 総走行距離93.75km
 実質走行時間4時間42分13秒
 平均時速20.0km/h
 消費熱量1426.3kcal
 
 
posted by Dandelion at 03:10| 長野 ☁| Comment(0) | 自転車の旅・御前崎編 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年06月06日

サマータイムブルースがきこえる 

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 焼津から御前崎を経て、浜松まで自転車で走るという計画を立ててみたものの、1日で100キロというのはちょっと強引な感じもして、行こうかやっぱりやめようかと逡巡していた休日前夜のニュース番組で、お天気お姉さんがこんなことを言っていた。
「晴れた日にしかできないことは、明日のうちに済ませましょう」
 新緑の5月も最終週だというのに、この春は一度もサイクリングに出かけていない。明後日以降、全国的に天気は下り坂で、しばらく太陽はのぞめないという。
 明日しかない。
 このチャンスを逃せば、サイクリストとしてのアイデンティティが揺らいでしまうかもしれない。迷っている暇はなかった。

 長野から新幹線を乗り継ぎ、静岡で普通列車に乗り換えて、焼津に着いたら11時。朝っぱらから自転車、乗らずに担いでばかりだ。デッキの狭い東海道新幹線は最後尾座席の後ろに置くしかないので気を遣う。
 駅前広場の片隅でそそくさと自転車を組み立てている自分の影が、路面に短く、くっきり映っている。出発する前に朝が終わろうとしている。頭頂部のあたりに日の温もりを感じたが、体感温度はそれほど高くなかった。風が冷たい。強くはないがひっきりなしに吹いているのが少し気になる。
 出発前に、駅舎をバックに自転車を置いて記念撮影する。バス停の傍らの足湯でのんびりくつろぐおばさんたちを眺めていたら、記憶の底からふっと、ある情景が浮かんできた。白いチューリップ帽をかぶったずんぐりむっくりの男。暮れなずむ駅前をとぼとぼと歩いている。映画「刑事物語」のワンシーンだ。あの駅は、この焼津だったろうか。片山刑事、いいキャラクターだったなあ。若くもなく偉くもなく、いつまで経っても宙ぶらりんのまま片付かない男。高倉健や坂本竜馬になれないことはわかっている。でもだからといって卑屈になるわけではない。理想と現実のギャップを自覚したうえで、それを自分の原動力にかえていこうとする姿は、どこかセルバンテスのドン・キホーテを思わせる。あまり笑わない武田鉄矢の静かな背中が妙にかっこよかった。何だかんだいっても俺、結局のところ嫌いじゃないんだな武田鉄矢は。
(註:「刑事物語」の舞台は、後でDVDを見直してみたら、焼津ではなく、沼津でした)

 若干肌寒いのでウインドブレーカーを着たまま走り出す。紫外線も心配なのでこの時期は長袖の方がいいのだ。
 漕ぎ出すと風の抵抗はそれほどでもなかった。日当たりのいい商店街の軒先を、ツバメが縦横無尽に飛び回る。日没まで8時間。ツーリングでは1時間に20キロというのが自分のペースだから、まあ大丈夫だろう。というか、駄目でもとにかく走るしかない。ここから先は鉄道はなく、自分の脚だけが頼りである。
 どこで何を間違えたのか、市街地をいくら走っても、目指す県道31号が現れてこない。昭文社のツーリング・マップルには14万分の1の地図しかないし、道路の案内板も何だかわかりにくい。このまま行って変な遠回りをするのもいやなので、適当な所で右折して国道150号に出ることにする。御前崎経由で浜松まで、この道を行けばとりあえず間違いはない。
 国道へ向かう途中の住宅地を走っていたら、かつお節の香りがした。近くに工場でもあるのだろうか。海の方から風に乗って流れてくるのかもしれない。
 国道はなるべくなら避けたいところだが、迷い道をしている暇はない。息がつまりそうな排気ガスも、道が交差するたびにうっとおしい歩道の段差も、我慢して走るしかなさそうだ。10キロほど快調に走って正午のサイレンを聞くか聞かないかというころ、大井川に差し掛かる。富士見橋を渡ったところで、たもとの階段を下りて、静岡御前崎自転車道へ。150号とはしばらくお別れだ。
 御前崎を挟んで、清水から浜松まで、静岡県の海沿いには自転車道の名を冠した県道が整備されている。全区間が専用道として独立しているわけではなく、所々で国道や別の県道に合流したりもする。そういう部分も含めた全体を一連の道として「自転車道」と呼ぶ。静岡御前崎自転車道は安倍川と御前崎を結ぶ全長60.9キロ。続いて走る予定の浜松御前崎自転車道は62.9キロ。いずれも全国でも屈指の距離を誇る自転車道だ。
 しかしこの自転車道、実際に走ってみるとなかなか厄介な代物だった。辿れないのだ、とにかく。いったん大きな国道に合流したりすると、次の自転車道の入り口がわからなくなる。国道からは小さな道がいっぱい出ているわけで、どれが自転車道なのか認識するには、案内の看板に頼るほかない。その看板が、あったりなかったり、なのである。きょろきょろしているうちにだいぶ来てしまって、たぶん過ぎたなと思いつつもわからないまま、仕方ないので国道をずーっと走っている。そんなことが何度もあった。そのうちにだんだん面倒くさくなってきて、もうこのまま国道を走ってりゃいいや、ということになる。
 そういうわけで、軽便鉄道としては日本最長を誇った静岡鉄道駿遠線の軌道跡を利用した区間というのが結局どこのことなのかわからないまま、往時の姿で補修されたレンガ積みのトンネルなども、ちょっと楽しみではあったのだが、見逃してしまったのである。
 牧之原市では国道を避けながらも見失わないようにして、並行する細い道を走っていた。自転車道なのか農道なのか、いまいち判然としなかったが、無理して辿ろうとせず、大まかな方角だけ把握しながら、入り組んだ街並みの中をのんびり行く。車を気にしなくていいのがありがたい。
 商店街というほどではないけれど、幅5メートルほどの道に沿って、服屋とか酒屋とか、懐かしい感じの店がぽつりぽつりとあったりする。古い街道なのかもしれない。瓦屋根の家々の間に所々、開けた土地があり、生け垣のような緑が見えるので何かと思い近寄ってよく見ると、茶畑なのだった。こんな街の真ん中で茶が栽培されているとは、さすがは牧之原。ここでしか見られない風景だろう。

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 知らず知らずまた国道に合流してしまい、視界が開けたところで防風林が見えた。あの向こうに海がある。国道を離脱してそちらに向かうと、風に乗って潮の香りが漂ってきた。防風林の切れ目に砂浜の入り口があった。静波海岸着、12時30分。
 左も右も、際限なく続く砂浜。サーフィンのメッカらしい。駐車場には他県ナンバー(特に関西方面)の車も目立つ。サーファーたちはみな黙々と海に入る準備をしており、浮ついた雰囲気は感じられなかった。海岸に立つモニュメントの台座に腰掛けて、一服する。外海だけに、さすがに波はそれなりにある。あんな海に向かっていくサーファーは、勇気があると思う。
 御前崎まではひたすら国道150号を南下し、灯台には13時30分に着いた。国道から別れ、岬に向かう県道241号の入り口あたりで軽い上りがあったりしたものの、おおむね快調に走ることができた。ここまでの走行距離42.42km。平均時速21.8km/h。いいペースだ。
 心残りは御前崎港周辺の市街地に寄れなかったこと。街は県道沿いに広がっているものと思い込んでいたが、そうではなかった。台地の上を走る県道から左に下りるべきだったのだ。
 御前崎でうまい魚でも、という目論見は外れた。灯台周辺は観光地として整備されているものの、ひっそりとして食事できる所も見当たらない。店はあるのだが、どれもシャッターが閉まっている。オフシーズンということなのか。何にせよこれから市街に引き返す時間はさすがになさそうである。これから始まる後半のために気力と体力を温存しなければならない。(続く)
posted by Dandelion at 08:54| 長野 ☁| Comment(0) | 自転車の旅・御前崎編 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする