2017年08月21日

「再会」

去年5月に行った熊本県宇城市のボランティアで知り合ったT君から、お盆に長野に行くんですが、と突然のメール。あの後、何度かメールのやり取りをしたが、特段の付き合いがあったわけではない。

何事かと思ったが、会って話を聞いて、ああそういうことかと納得した。長野県内の人と5月に結婚して、その奥さんの実家に来たついでに寄った、ということだった。

T君は30代前半の図書館職員で、千葉の市川に住んでいる。熊本で僕らは他の4、5人と一緒にチームを組み、民家の部屋の割れた壁を撤去するという作業をした。その帰り道、ボランティアは初めてという彼は、思い切って参加してよかった、一歩踏み出せた気がすると、うれしそうに語ったのだった。

長野駅近くのカレー屋でランチをしながら、T君は近況を語ってくれた。
あれから2回、熊本でボランティアをし、2回目は母親を連れて行ったこと。奥さんは学生時代からの友達で、今年になって関係が進展し、今は都内で新居を探していること。山が好きな図書館の同僚が退職して、山小屋で働くために長野県内に移住したこと。最近ランニングを始めてハーフマラソンにもエントリーしたが、それは僕の影響だということ。

去年、熊本から博多に帰る新幹線の中で、僕は持っていた「走れメロスマラソン」のシューズ袋をきっかけに旅ランの経験を話した。確かにその時T君は、いろいろ質問をして、自分もいつか走ってみたいというようなことを言っていたが。あれは話を合わせてくれたというだけでなくて、本気だったのか。

地震の影響で間引き運転だった新幹線は混んでいて、僕らはデッキに立って1時間余り、お互いの仕事や趣味、地元などの話をして過ごした。初ボランティアのT君はジーンズにスニーカーという軽装で来ていたから、僕はベテラン気取りで、彼に装備や心構えについて、得意になって教えたのを覚えている。

T君は去年のおとなしい印象とは違って、明るく快活に、よくしゃべった。
そんな彼と話をするうちに、心の中に風が吹いたような、すがすがしい気持ちになった。彼と僕の間にあった断片的な物事がカチッとかみ合って、一気に全体が見渡せた。そんな感覚があった。

彼の人生の物語は、あの熊本の経験をしっかりと刻んだうえで、確実に進展している。そして、その物語の一部に、僕という存在があるということがうれしかった。

もちろん僕の人生においても熊本や彼の存在は、何らかの役割を果たしているに違いない。ああ、あれはそういう意味だったのかと、物事の筋道がはっきり見える瞬間が、いつか来るのだろう。

これから妻の実家にいったん戻って、それから一緒に東京に帰りますと言ってT君は、お盆の長野駅の雑踏の中に消えていった。そういえば去年、博多駅で別れる時も、こういう雑踏の中で後ろ姿を見送ったっけ。あの時は再び会う日が来るなんて、思いもしなかったが。

人生のめぐり合わせとは、不思議なものだ。

posted by Dandelion at 06:14| 長野 ☀| Comment(0) | 九州・沖縄の旅 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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